ワイパーが壊れた
雪の日、リアウィンドウにそこそこ雪が乗った状態で、雪を下ろさずに走り出したが、国道で後続車を確認するためにサイドミラーでは不足だったので、リアワイパーを使って雪を払おうとしたらワイパーがゴリゴリ言ったまま動かなくなってしまった。
一度動き出したワイパーは初期位置に戻るまで動こうとするので、スイッチを切っても止まらない。移動中の15分間ずっとゴリゴリ言わせたまま走り続けることになった。
車を降りてから手で押してやるとワイパーは再び動作して元の位置で止まった。
どうやらギヤの歯が欠けてしまったようだ。手でギヤが欠けた区間を超えてやれば動き出すということだろう。
ギヤが一回転以内の回転角で往復しているのなら、ギヤの位相を変えて欠けたところを使わない範囲に持っていけばなんとかなるかもしれないし、単純な形状の部品ならCNCか3Dプリンタで作りなおせるかもしれない。
と思って取り外してみた。
ワイパーモーターの外し方
・ワイパーブレードを外す。
カバーを引っ張って外し、軸のナットを取るとブレードは抜ける状態になる。
ブレードはテーパーにはまっているだけなのでまっすぐ抜く。
・その下のカバーを外す。これもはまっているだけなのでこじればとれる。
・さらにその下にギヤボックスを固定するナットがあるので外す。
24mmなのでそれなりにでかい工具を持っている必要があるが、あまりトルクはかかっていなかったのでモンキーレンチでも問題なかった。
・ウォッシャー液のノズルを兼ねたカバーを抜き、ホースを外す。
写真はすでにギヤボックスを外したあと。こんな感じにホースがつながっている。
水は大して出てこないので特段の心配はいらない。
・モータのカプラ―を外す。
しかし、このカプラーは写真のようにオス側の出っ張りが引っかかることでロックされて抜け止めになるが、引っかかった爪を開放する構造がどう見ても見つからない。うまく外す方法があるのかもしれないがわからなかったので精密ドライバーを突っ込んで強引に外した。
・トランクの内側からモータユニットを固定しているボルトを三本外す。
これでモータが取り外せる。
プレートがトランクと固定され、このプレートにギヤボックスが取り付けられている。
裏のネジを6本だか外すとギヤが現れる。
複数段の平歯車のギヤボックスで、蓋を開けたとたんカラーだのギヤだのがバラバラ落ちてくるのかと思ったが、シンプルな構造で、分解する側としては非常にありがたい。
止めていたプレートは抜け止めの役割だけで、軸の支持もなにもないただの板だ。
ウォームギヤで減速してスライダクランクでラック&ピニオンを駆動する仕組み。揺動のためにラックをクランク機構で動かすというのが面白い。
単に揺動するなら、てこクランク機構にすれば回転→揺動と一工程で片付くうえ、構造もクランクとワイパー軸から延ばしたアームをロッドで連結するだけで済みそうだが、
この機構では変換の工程が回転→直動→揺動と一工程多く、ラック&ピニオンの分部品のコストも高そうだが、この機構ならワイパーがクランクと一直線にならんでしまう死点がないのでワイパーの動作角度の自由度が高い。
また、てこクランクの場合はワイパーの揺動の両端でワイパーの駆動力が最小になるがこの機構な逆で、ワイパーの動作範囲の両端で最も駆動力が高くなる。(と思う)
ワイパーが待機するのは動作範囲の端なので、動き始めに最もトルクが出る構造なのもメリットなのかもしれない。
このギヤボックスは、最終段のラックとピニオンは歯も大きく金属製で厚みもあり、絶対に壊れないという意思を感じるが、それと比べてウォームホイールがモジュールも小さくプラ製で貧弱に見える。
歯数を稼ぐためにモジュールが小さくなってしまうのだろうか。
ウォームホイールを外すと歯がきれいにナメていた。
裏には原点センサがある。ブラシがギヤの裏側の端子に当たって初期位置を検出するまでモータを回し続けるような動作をしているようだ。
ギヤがプラなのは端子のベースとなるギヤを不導体にしたいせいもあるのかもしれない。
ともかく、ウォームホイールを作るのは難しい。
接点はギヤと一緒なのでギヤの位相を変えることもできなさそうだし、変えたところでモータの回転方向は一定でどこかで必ずナメた区間を使うので、あまり意味がない。諦めてそのまま組み直した。
ありがたい構造なのは、このしくみならギヤの角度を適当に戻しても一度ワイパーブレードを取り付けずにモータを動作させれば原点を割り出して止まってくれるのでそこでブレードを取り付ければよく、組み直すのは簡単だった。
元通りに組み直したはずだったが…
ブレードを取り付けずにワイパーを動かして原点を出し、
ブレードを取り付け、思わぬ方向に動いた時のために念を入れてブレードを起こしてワイパーのスイッチを入れると思わぬ方向に動いてしまった。
ワイパーの動作方向を変える方法?
ギヤにはクランクの支点となる穴が180度ズラして二つ空いていて、どうやら元々とは違う方に取り付けてしまったらしい。
こうなるとギヤの原点位置が180度変わり、ギヤ半周でワイパーが上がり、もう半周でワイパーが下がるというサイクルが反対になるため、ワイパーは下向きに動作することになるようだ。
もう一度ブレードを外して上いっぱいの位置に角度を変えた。
もう一度スイッチを入れるとワイパーはかつて下限だった位置まで動き、元の位置に戻ってきた。
ワイパーをゴミがたまらないようにとか、雪が積もったときに折れないようにあえて縦向きに切り替えるというチューニング?があったり、空力のためにプリウスはリアワイパーを標準で縦待機位置にしているとかいうこともあるようだが、そうしたい人はこの方法でワイパーの動作方法を変えられる。
ただし、通常の位置の場合、ワイパーは窓の中央に放たれるウォッシャー液をかき上げ、垂れた液をかき下げることで窓に液が行き渡るようになっているが、この位置では下へかき落とすだけになってしまいウォッシャーを有効活用できない。
が、どうせギヤかユニットを交換しない限りワイパーは使えないからこのままにしておこう。
もしかしたら空気抵抗が減って風切り音がなくなったり(鳴っているのかは知らないが)燃費も数メートルくらい向上したりするかもしれない。