前回、ヘッドを開けたら壊れていることに気づいたKIPS。
壊れているのを見てしまった以上、そっと戻して乗り続けるわけにはいかない。
それにKDXの入手以来KIPSの恩恵を受けたことがなかった可能性がある。どう変わるのか興味もある。
KIPSバルブの入手
KIPSのバルブ部品の入手方法が問題だったが、手に入れることができた。
CNC四軸加工の成果物...ではない
SRではないKDX200用のパーツである。
オンラインショップで取り扱われていた。互換性があるか確信はなかったが、
KDX200SRがKDX200ベースであることから、エンジンはほぼ同じものが使われていてだいたい互換があるというネットの情報と、カワサキのオンラインパーツリストのイラストが両者とも同じに見えたので、これも共通なのではないかということで買ってみた。
3500円くらいなので失敗してもダメージは少ないし、追加工くらいで使えるかもしれない。
バイク雑誌のネット記事の車体も自分の車体も同じようにリゾネーター側のギヤがナメていたが、カワサキの在庫検索でもリゾネータ側のみ在庫があった。
低回転時に働く方のバルブなのでカーボンが溜まりやすく壊れやすいというようなことがあって多めに作ってあったりするのだろうか。
潰れたバルブと比較する。全く同じに見える。
長さ、シャフト径、ポンチマーク位置など主要な寸法はノギスで測ったら同じだった。
歯先円直径を測ったかどうか忘れてしまったが測って同じであることを確認した気がする。
ガスケットは社外品のセットを注文しておいた。
インマニも外から見てひび割れていたので念のため注文した。
ヘッドガスケットと紙のガスケットは形が特徴的なのですぐわかったし、小さいOリングはKIPSの部品各部のものということがわかったが、残りの小さいOリングとエキゾーストガスケットらしき三つは説明書もないのでどこに使うかわからなかった。
ガスケットはスキャンしておく。以降、ガスケットシートを買ってスキャン画像に沿って切れば自作することができる。
清掃
各部のカーボンを落とす。
排気ポートなども含め見えるところはなるだけ落としておく。特にKIPSのバルブが収まるところやロッドの穴もカーボンがたまっているので再発防止のためにもちゃんとしておく。
クレ クリーナーキャブを使ったがパーツクリーナーやシンナーなどを使ってみても落ちなかったカーボンがよく落ちる。
缶を見てもどれも石油類と書いてあるだけで何が違うのかよくわからないがやっぱり各用途に適したものとしての違いを持ってるんだなと思う。
ピストンヘッドはあまりきれいにならなかった。
シリンダ内側に変なキズやこすれたような跡はなかったので一安心した。
組み戻し(2019/10/7)
組み戻しをしようとして、組み方がよくわからないことに気づいた。
他の人の整備記録の記事があったのでそれを見ればいいと思っていたがKDX125SRだった。125はKIPSのバルブ数が異なるようで参考にできない。
KIPSをばらすときに見ておけばよかったがなかなか外れなくてごちゃごちゃやってるうちに元がどう組んであるのかを見ておくのを忘れていた。
案外KDX200SRをピンポイントで整備している記事が見つからない。
Youtubeでロシア圏らしき人が整備する420pの動画を見つけ、それを凝視することでどうにか組み方を確認できた。
サービスマニュアルは持っていなかったが持っておいた方がよさそうだ。
バルブやロッドには目印があるので、それを合わせていけばよい。
まず、ロッドの溝とリゾネータ側バルブのギヤに打たれたポンチマークを合わせる。(写真上)
このとき、ロッドは最大まで引かれた状態となる。つまりKIPSが全開の状態である。
この状態で反対側のバルブのギヤ同士のポンチマークを合わせてギヤを差し込む。(写真下)
そしてさらに、排気ポート側のバルブの軸のDカット(軸の側面が平らに加工されている部分)の面が図のようにシリンダーヘッド方向を向くようにする。
サービスマニュアルはないので絶対に間違いないとは断言できないが、
このように組むことで、ロッドが引かれたときにポートタイミングが早まるようなバルブの開き方になり、KIPSの動作とバルブの動作の辻褄が合うので間違っていないと思う。
詳しく説明すると、
排気ポートのバルブは切り欠きのついた円盤状のバルブと(写真がない)、排気ポートの切り欠きの組み合わせで機能するようで、ロッドの動作量に応じてバルブが回転し、上記のように組めば全開時には排気ポートに設けられた切り欠きとバルブの切り欠きが合う。
下の写真は排気フランジ側から見たバルブ。
シリンダの切り欠きはヘッド方向にあるので、排気ポートの切り欠きが合っているときは排気ポートが拡大&位置が上昇することになり、流路が拡大して抜けが良くなる&ポートタイミングが早まることで高回転寄りに変化するはず。
このことから、ロッドが引かれているときにDカットが上にくるように組むのが正しいと考えられる。
とりあえずバルブを収めたが、ロッドを引いても動きが渋い。各部のガタで部品が傾いてひっかかってる感じだ。2ストオイルを塗りたくったらとてもスムーズになったが、オイルが切れているときは動かないというのは不安がある。
シリンダーヘッドを付けずに動かしているので、軸が片持ち状態になっていることもあるだろうし、ギヤをナメたせいかロッドも少し摩耗していて、そのせいでガタが大きかったりするせいもあるかもしれない。ロッドは新品が見つからなかったので買っていない。
2ストの場合、4ストのように部品がオイル漬けということにはならないし、排気バルブなだけあってギヤ側に積極的にオイル(混合気)が行くような構造でもなさそうだが潤滑はうまくされるのだろうか。
組むときに塗ったオイルが切れたとたんに壊れるかもしれない。たまに様子を見ておいた方がよさそうだ。
ともかく組み上がったのでエンジンをかけてみる。
2ストエンジンをばらした後はオイルポンプからのオイルが行くまでオイル無しで回ることになるので混合燃料を入れておかないと焼き付く可能性があるということを作業前に偶然Youtubeを見ていて知った。言われてみると当然だがこれを見ていなかったらそのままエンジンをかけていたかもしれない。
結果
クーラントを入れてエンジンをかけ、オイルポンプからのオイルが回るまでアイドリングしたあと少し走ってみたところ、
以前はギヤに対して回転が低い状態(6速で60km/hくらい)だとエンスト寸前のノッキング状態のようなエンジンがバコバコ叩かれているような感じがあった。
「6速で60km/hはそれほど低速ではないはずだが、バイクは車より高回転だったり、2ストだったり、しかし同じ2ストのYB-1はそんなことはなかったが、このバイク特有の性質だったりするのかもしれない」と無理やり納得していたが、そのノッキング風の現象がなくなった。感覚は鈍いほうだがこれは間違いなく変化した点だ。
さらに走り出し、低回転からスロットルをちょっと開けるだけでガツンと加速するようになった(気がする)。
あまり自分の五感による評価は信用していないので元から一切変わってなくても「良くなった!」と言っている可能性はあるが、上記二点の変化は低回転域での変化であり、故障していたのも低回転側バルブだったことから、これが正常に機能するようになった恩恵だとすればつじつまは合うのでそう信じることにする。
KIPSの動作確認方法
しばらく経って、KIPSが再び壊れていないか確認してみた。
KIPSの動作確認は以下の手順でヘッドを開けずに確認できる。(KIPSのアームとレゾネータ側のバルブのみ)
- KIPSのロッドを引くアーム部分のカバー、レゾネータ室のカバーを外す。
- ロッドを手で引き、スムーズに押し引き出来ることを確認し、レゾネータ室の穴からKIPSのバルブを覗き、ロッドの押し引きに連動して開閉しているか確認する。
- レゾネータ室のカバーを取り付ける。
- エンジンをかけて空ぶかしし、一定のエンジン回転数からアームが動作するか確認する。
マフラーを外せば中央の排気ポートのバルブの動作も確認できる。
今回はレゾネータ側のバルブが故障していたことと、ロッドのラックが摩耗していることから、レゾネータ側のバルブの動作が確認できたなら他の部分も大丈夫だと思う。