サイドブレーキ引き忘れ防止装置を作る

まえがき

土曜日の昼、半日の休日出勤を終えて昼食を手に入れるべくコンビニに立ち寄っていた。

いまいち食べたいものが思い浮かばず商品棚を見渡していると、店員が声をかけてきた。「すいません…」

コンビニで店員が話しかけてくることはあまりない。

振り返って返事をすると続けて、「あの…お客様の車は○○でしょうか?」

とたずねてきた。一瞬車に興味があるのかと思ったが、なにか目立った特徴もない私の車に興味を持つはずもない。そうです、と返すと、

「ちょっと他の車にぶつかってるみたいなんですが...」

えっ、と窓の外に目をやると、コンビニの最前列に停めたはずの車はそこにはなく、後ろの車の側面にメリ込んでいた。

サイドブレーキだ、状況は一瞬で理解できた。サイドブレーキの引き忘れで不意に車が動きだすのは何度か経験済みだったからだ。

心拍数が急上昇して胸が熱くなるような感覚は、部活で大会に寝坊したときも、悪さをして職員室に呼び出しを喰らっていたのを忘れていて、放課後になって思い出したときも、毎回同じだなあと思っていた。

 

すぐに再発防止策を練らなくてはならない。

この感覚も懐かしいが別に思い出したくはない。それに保険料が上がるのは困る。

ここで、「停車時はギヤを平地と下り坂ではリバース、上り坂では一速に入れ、サイドブレーキを引いておかなければならないと教習時に習うだろう、どちらかを忘れても普通は車は動きださない」と言う人もいるかと思うが、これについては何度かギヤを入れたことを忘れてエンジンをかけたあとそのままクラッチを上げてしまい肝を冷やすことがあったため、しだいにやらなくなってしまっていた。

第一、普通が何なのか知らないが、サイドブレーキを引き忘れる奴はギヤも入れ忘れる。

気を付ければそんなことにならないという理屈で済むならプレス機に両手押し操作も安全装置も必要ない。

 

AT車に乗るという選択肢もあったが(駐車時にはほぼ確実にパーキングへギヤを入れるため)、運転の楽しみを半減させるのは嫌だし、ブレーキとアクセルを踏み間違える危険もある。今のところ踏み間違えたことはないが、歳をとってからではどうなるかわからない。サイドブレーキを引き忘れる奴はギヤを入れ忘れるし、踏み間違いもするに決まっている。それくらい自分のことは信用していない。

 

サイドブレーキの引き忘れ防止装置の製作

というわけで、サイドブレーキの引き忘れを防止する装置を考えることにした。

 

どうやって引き忘れを防止するか。自動で引いてくれるとありがたいが難しいので、単純に、引くべき状況で引いてない場合にアラームが鳴るようにする。

そして、サイドブレーキを引いておくべき状況はいつで、それをどう判断するか。

簡単な方法として、キーがON位置でない場合をサイドブレーキをかけるべき状況として判断することにした。これならばIG電源の電圧を信号として拾うだけでいい。

キーにはオフ、ACC、オン、STARTの位置がある。それぞれ、

キーオフのときの動作

車の機能がすべて停止する。この状態で車を動かすことはレッカーされるとき以外にないのでサイドブレーキ引き忘れの監視対象とする。

ACC時の動作

以上がACC位置で使用可能な機能である。

停車時にラジオなどを聞いたり電源をとる理由でACC位置にすることはあるが、この状態でも車を動かすことは考えにくいため、この場合でもサイドブレーキが引かれていなければアラームを鳴らす。

キーオンのときの動作

ON位置で動作可能となる装置は、

  • パワーウインドー
  • 空調用ファン
  • ヘッドライト
  • エンジン

となる。おおむね電力消費量が大きそうなものだ。

キーをSTARTにひねるとセルが回り、エンジンが始動する。その後、キーから手を離すとON位置となるので、通常走行時はON位置になる。

当然走行中はサイドブレーキを下ろすため、この状態の場合が唯一サイドブレーキを下ろしていてもアラームが鳴らない。

 

こうしておけば、残るリスクは「車内で待機中、空調等を使用するためエンジンをかけていたが、サイドブレーキを引き忘れており、車をいったん降りた、もしくは寝ている間に車が動いた」という状況だけになる。

回路

信号を受けてアラームを鳴らす回路を作る。非常に簡単。

リレーを用意し、コイルの励磁にIG電源(キーON)を使う。

サイドブレーキの引きを検出するためにスイッチを使い、リレーのNCとスイッチを直列に接続する。

こうすることでサイドブレーキがかかっておらず、かつキーがイグニッション位置でないときに回路が閉じて常時電源がブザーへ流れるようになる。 

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回路図間違ってるかもなのでよく確認してから作ってください

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ブザーの電源は常時電源からとるが、停車時にリレーが電力を食わないように、サイドブレーキが下りているときにリレーのNC端子を介して常時電源がブザーに行くようにする。サイドブレーキが上がっているか、IG電源がONになってリレーが励磁したときにブザーへの電力を遮断する。

こうすれば停車時に電力を食うのはサイドブレーキを引き忘れたときだけである。

 

サイドブレーキの検出用のマイクロスイッチは、サイドブレーキを下ろしているときに押されるようにした方がいいです。

そうしておかないと、仮にマイクロスイッチが壊れたり、外れたりしたときに、サイドブレーキを引き忘れてもアラームが鳴らなくなってしまいます。

サイドブレーキを下ろしたときに押されるようにしておけば、マイクロスイッチが壊れたり外れたりすると、キー位置に関わらずブザーを止められなくなるので、異常があったことに気づけます。

実際に一度マイクロスイッチが外れてブザーが鳴りっぱなしになったため、直すまでの間は応急的にヒューズを抜いて強制的に止めました。

サイドブレーキレバーへのスイッチの取り付け

サイドブレーキ警告灯のスイッチの出力を分配して使おうと思ったが、信号がアースに落ちたときに警告灯を点灯する回路だったのと(下流なので電力がとれない)、

サイドブレーキ警告灯はほんの少しでもサイドブレーキが上がっていればオンになってしまうので、引き量が足りなくてタイヤをしっかりロックできていなくてもアラームが止まってしまう。

そのため、センサのマイクロスイッチを別で取り付けた。

初めは修正の必要があったときのため接着剤で取りつけていたが、

数か月で剥がれてくるのでタップを立て、ネジで固定した。

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マイクロスイッチの位置は、ブレーキワイヤーの伸びなどでサイドブレーキの引き代が増えてもマイクロスイッチがもぎ取られないような位置(レバー根本付近の、動作範囲が狭い部分など)になるように注意する必要がある。

ホットボンドなどで一度スイッチを仮止めして、サイドブレーキを動かしてみればわかる。

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エーモン 平型ヒューズ電源 DC12V・60W/DC24V・120W 15Aヒューズ差替用 E530

エーモン 平型ヒューズ電源 DC12V・60W/DC24V・120W 15Aヒューズ差替用 E530

 

 ヒューズから電源を取れる商品で常時電源とIG電源を取り、サイドブレーキのカバー下まで配線を引いてくる。

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 カバー下が汚いのは気にしないでください。

サイドブレーキを引かずにキーをオフにするとブザーが鳴り、引けば音が止むことを確認して完了。

 

写真を撮るのが面倒で文章だけで説明している部分があるので、作ってみたいという人がもし居て、意味が分からないという部分があればコメントいただければ対応します。

  

今では車も乗り換えたが、買ってすぐこの装置を移植した。

習慣がついたのか、始動時にギヤを抜き忘れることもサイドブレーキを引き忘れることもほとんどなくなったため、ブザーを聞くのはたまに壊れてないか確認するときだけだが、今後買う車には必ず付けるだろう。