まえがき
キンドリングクラッカーを借りて使ってみた。
刃は斧のように刃元ほど厚みが大きくなり、70mmくらい(うろおぼえ)になる。手持ちの和斧より広い。塗装のおかげか刃の側面のすべりがよく、丈夫な木を叩き込んでいくと締まる力で刃を滑り、木が飛び上がることもあるくらいで、叩く力を効率よく割る力に変えるような作りになっているようだ。
肝心なのはフレームに刃が固定されているというところで、ハンマーで叩くときに刃と薪が動かないので刃をあてがう位置をコントロールしやすく、叩いてもズレない。これにより細かく割るときの位置決めの時間、刃の位置修正の時間のロスがなくなり、作業スピードの向上につながる。
刃の上にはリングがあって、勢い余って手が滑ったりつまづいても刃でけがをすることないようになっていて安全だ。作業スピードが上がって調子に乗ってぱかぱか割っているときにうっかり手を滑らせてもケガすることはない。
一つあると便利だと思うが、少し値が張る。構造そのものは簡単なので自作してみるのも悪くないと思った。
刃の形状に関しては厚みにしても形状にしても、とても作れないので、
「刃が安全なフレームに固定されている」という点を実現することに絞って自作する。
これだけでも十分キンドリングクラッカーの恩恵は得られると思う。
イメージを固めるために積み木。
刃は、自作のマチェット型の刃物を使う。(マチェット型というのは、先端のR部は刃をつけておらず、9mmの刃厚と2kg強という異常な重量がマチェットの特徴とは大きくかけ離れ、鉈どころか斧のように打ち下ろす使い方しかできないから)
ちなみに必要がないので先端に刃はつけていない。
ただのフラットバーを鋭利にしただけのなまくらである。
フラットバーを刃物のように砥ぐのもなかなか難儀したので、大きめの鉈を買ってそれに合わせてフレームを作るのがいいと思う。
すると思うのが、「せっかく買った(作った)鉈をキンドリングクラッカーに作り変えてしまって、鉈として使えないのは惜しい」ということである。
そこで、フレームと刃を固定するのではなく長穴を作って横から差し込み、抜き取れば今まで通り鉈として使えるというソリューションを提案したい。
材料は木で作る。建材の端材がたくさんあるので材料を買う必要はない。薪とするためにもらったものだが、製材されているのでただ燃やすのももったいない。
”薪を材料として薪づくりの生産性を向上する”というテーマにスマートさを見出してやる気が出てきた。
上からハンマーの負荷がかかる分太い材料を使う必要があり、コーススレッドでの組み立てでは材の太さや衝撃に対して頼りないので木組みをやってみる。太いほうがほぞを作ったりするのはやりやすいだろうから木組みの挑戦におあつらえ向きの製作物だ。
上から荷重がかかったときにゆるまない構造で組める組み方を考える。
ホワイトボードに描きだした図。
寸法は廃材のサイズに合わせるのでその都度決める。
製作
使った道具は、
・ジグソー
・電動ドリル
・電動丸鋸
手工具でやろうと思うと、弓のこかノミがないとコの字の切り欠きが作れないと思う。
足。
かみ合う部分。
気を付けるべきはうっかり左右対称の部品を作らないことだ。
梁。切り欠きに左右を組んだ状態の足がはまり、テーパ部に刃を支える柱が立つ。
はめあいが上手くいけば柱が中心へずれていくので横から足を押さえつけるはず。
荷重を支えるのに最適な中央部を意味もなく浮かす。
見た目にひとつ凝った感じの部分を作りたかったからだ。
全部品。奥から足、梁、柱。
柱はほぞを作る精度が悪くてスカスカになってしまった。
足と梁の面がきれいに揃ったのは上出来だと思う。
組みたった様子。まだ完成ではないが、主要な部品は組み立ったので試しに木を割ってみた。
切りたてで薪が柔らかいのもあるが刃付けが悪いわりにはサクサク割れる。
節の部分で引っかかったので、杭打ち用のハンマーで叩いたら足のかぎ状の部分が割れた。
一番弱そうな感じはしていたものの。。。
木を割る道具の製作の中で、木が割れてしまうことが問題となるとは皮肉な話である。
思うにかぎ型では、かぎ部分の曲げで荷重を負担することになる。この部分をテーパにしておけば、足が広がろうとするほど締め上げる作用で摩擦が働くうえ、かぎ状のスミ部に応力集中がなくなり、いくらか強度が上がったのではないかと思う。
木組みは十分味わったのでこれに関しては作り直しはしないことにした。どうせ柱も隙間が多すぎてぐらぐらするのでネジで固定しなくてはならないため、足部分にはネジ止めで補強を入れて使うことにした。
仕上げに上部の枠を作る。ここもネジ止め。
作っていて思ったが、斜めの部材の固定のときはコーススレッドを締めていくと材料が斜面に沿ってずれていくので、こういうところほど木組みが適していそうだ。
木組みとまではいかなくとも、段差を作ってかみ合わせて上からネジで止めるというような構造がいい。
輪っかと足の補強材を入れ(一応まだ中央は浮いている。)、マチェットの握りを作って完成。
初期型を破壊に至らしめた杭打ちハンマーのフルスイングで薪を割ったが壊れなかったので強度は十分と言っていいだろう。
小さめの薪を指二本分くらいの細さで割っていくという作業もやってみたがとんでもなく効率がよかったので作った価値は十分あると思う。
変色したり腐ったりするといやなので残っていた防腐塗料を塗っておいた。
まとめと気づいたこと
・刃の形状まではまねできなくても刃物が固定されているだけで作業性は良くなるので自作の価値はある。
・刃が薄いと、調子に乗って大きな木を割ろうとしたとき、刃が食い込んで木を外すことも割ることもできなくなることがある。(刃元が厚くすべりがいい本物のキンドリングクラッカーは木を左右にこじっていれば抜けてくるので取れなくなることが起こりにくい)
・刃物を横から差し込む方式は、木が取れなくなったときに刃物を抜くこともできなくなるので、刃物を一旦抜いて挟まった木を他の方法でどうにかすることができない。(長穴ではなく切り込みにして、刀掛けのように上から刃物を置くのがいいかも?)