CNCを組み立てたが、CNCの門型フレームは土台のフレームと分割されており、組み立ての基準となるものも存在しなかった。つまり、ボルト穴の遊び分X軸に対してY軸をZ軸周りに自由にズラせるということだ。
そのほか、そもそもの部品の程度がわからないためどれくらい各軸が狂っているのかは不明だ。
薄板を切り抜くだけの用途に使うとしてもX軸とY軸の直角とXY平面に対する主軸の直角くらいはできるだけ出しておきたい。
特にこの部分は自分の手で組み立てているので間違いなく精度が出てないという実感があるため、何かの基準に基づいて精度を調整したという感触が欲しい。
検査項目
検査項目を思いつく限り列挙すると、
- X軸真直度
- Y軸真直度
- Z軸真直度
- XY平面度
- YZ平面度
- XZ平面度
- XY直角度
- YZ直角度
- XZ直角度
- XY平面と主軸の直角度
- 主軸の芯振れ精度
- テーブルの平面度
こんなところだろうか。
項目1~6
このうち、1~6の各軸の真直度、平面度に関してはリニアブッシュ、シャフトの真直度に依存するのでどうにもできない。
直動部品メーカーが作ったものだろうからそうそうダメということはないと思う。
このCNCを作るときにうっかり落としたり木箱をこじ開けるときに使ったりしてない限りは。
項目7~9
7~9の直角度。フレームの組み立てのずれはこれを修正すれば解決できる。
フレームは適当に置いてネジを締めただけなので何ミリずれているかもわからない。
移動量が大きいと余計に傾きが効いてくるし、テーブルサイズが大きめのものを買っている分ダメージが大きい。調整が効く限りは出しておきたい。
項目10
X-Z軸の直角、Y-Z軸の直角とどう違うのか?と思うかもしれない。
だが、XY平面に垂直なZ軸だとしても、Z軸に対して主軸が傾いている場合という状況が存在する。
工具がまっすぐ下を向いたまま斜め下に降りてくるか、斜めになった工具がまっすぐ降りてくるかの違いということになる。
主軸が垂直かどうか見るには、スコヤやダイヤルゲージを当てられる軸に平行なまっすぐの面が必要だ。
そんなものはモータのカンしかないので、そこで見るしかない。
そして、Z軸のガイドが垂直でなければどっちが傾いているかわからないので先にZ軸の傾きを把握、修正しておかなくてはならない。
項目11
主軸の芯振れは、主軸に丸くてまっすぐだという信用のあるものを取り付けて、根本と先端での振れの差、全体的な振れを見る。このときに使うコレットも当然信用あるものを使わなくてはならないし、取り付け面も掃除しておかないと簡単に変わる。
見たところで直しようはないし、コレットは同じくChinaCNCZoneから買った13個で3000円未満のものだ。最終的にどれくらい工具が振れているのかを見る程度に暇なとき確認する。
項目12
テーブルは扁平なアルミフレームを四列並べているだけで、手でなぞっても高さが違うのははっきりわかる。
これは自分で自分のテーブルを削らせれば機械の精度を上限として平面を得ることができるはずだ。しかし、削るのなら各軸の直角を出してからにしたい。
テーブルが軸の可動範囲以上なので段差ができてしまうのがちょっと気に入らないが仕方ない。
検査、調整
直角を出すにはスコヤが必要だが、いいものはそれなりに値段が張る。
買うのを迷っていたら、直角基準にできるプレートを手に入れる機会があった。
上面を面削りし、側面は直角に削ったプレートである。
これで晴れて検査、調整ができるというもの。
XY直角度(2018/11/22)
検査
まずはこのプレートをテーブルに置き、直角基準として一辺をX軸に平行にする。
ダイヤルゲージを主軸モータに取り付け、ダイヤルゲージの針が触れなくなるようにした…とはいえ、0.1mmくらいの範囲で針が小刻みにブレた。
ブレはあるが、このブレの芯をまっすぐにとらえるイメージで平行を出す。
この状態でダイヤルゲージを取り外して向きを変え、Y軸方向でもう一方の辺をなぞる。
このプレートは280mm四方だが、この距離の移動で0.7mmくらい針が動いた。
当然ながら直角ではなかった。Y軸の可動範囲400mmにすると1mmくらいになってしまうのでやはりこのまま使うのは気が引ける。
気になるのは、針の動きがリニアでなく、左から中間までは順調に針が動くが、中間から右へは針の動きがほとんどなくなることだ。シャフトがまっすぐじゃないのか?
Y軸方向も小刻みな針のブレはあった。
修正
傾きを直すため、門型フレームの柱を留めているネジを外し、その状態で基準をなぞりながらフレームの傾きをズラしてみる。が、もともとのボルト穴がわりと適当に開けられているせいもあり、ネジが当たってズラし代があまりない。めいっぱい動かしても足りなかった。
XY直角度の修正するためのフレームの修正
仕方ないので門型フレームを下ろし、X軸スライダに空いている門型フレームのボルト穴を拡大することにした。
現状は8mmのボルトに対し9mmの穴が開いている。
材料端から穴のふちまであまり余裕がないのでとりあえず9.5mmに拡大する。
これでも足りないので、次はX軸スライダと固定されているリニアブッシュのネジを緩め、X軸スライダ自体の傾きをずらせるようにした。
しなる?シャフト
この状態でふたたびダイヤルゲージがなるべくまっすぐになるようにフレームをズラしていく。
すると、針の動きが途中で止まるというのはどうやら違い、端から端まで動かすと、中間をピークに針が元の位置に戻る。つまり、山なりな面をなぞっているかのような針の動きをしていることがわかった。
初めはY軸が傾いていたので、山の下りの傾きとY軸の傾きが釣り合っていたのだ。
原因の考察としてはY軸のガイドに対してモータがオーバーハングしているため、中間へ行くほどシャフトのたわみが大きくなる。
シャフトがたわむとY軸のガイドを中心に回転するため、モータがお辞儀する格好になり、Y軸、Z軸方向に変位しているのだろうと考えた。
試しにモータを下ろして基準をなぞったときは0.15mm、
モータを取り付けて同じようになぞると0.3mmくらいのゆがみとなる。
しかし、中間地点で0.3mm変形したところで、Z軸のステッピングモータをグイッと手で押して(Y軸シャフトがたわんでいるとしたら元に戻る方向へ)みたが針はゼロに戻らない。
リニアシャフトのゆがみなど、どうも複数の要因があるようだ。
さらなる対策
シャフトが初めから曲がっているのかどうか、確認の手段としてはシャフトの固定を緩めて180度回転させる、上下を入れ替える、シャフトを外して平面上で転がしてみる。0.3mmもゆがんでいるなら、それなりに平らなテーブルの上でも容易に転がり方の異常に気付けるだろう。
だが、今それをやる気力はない。
モータによる荷重に関しては、主軸モータのブラケットを作り直すことで10mmほどY軸方向に寄せられそうだが、根本的な解決にはならないうえ、サイズが大きいのでブラケットを作りなおせそうな機械は3Dプリンタしかない。
結果
精度調整の結果は、
Y軸ストローク400mmに対し幅280mmの基準を使い、両端どうしの誤差は0.05mmくらいに追い込んだ。
が、ガイドが何らかの理由で山なりにゆがんでおり、中間付近真ん中では0.3mmまで針が触れる。
フルストロークに対する真直度で言えば0.5mmくらいになるだろう。
という結果となった。
XZ直角度の修正
調整未実施
YZ直角度の修正
調整未実施
XY平面と主軸の直角度
調整未実施
主軸の芯振れ精度
ロングシャンクのタップの軸が8mmだったので、これをテストバーとして芯ぶれ精度を検査した。
テストバー:ロングタップの軸(OSG)
コレット:ER20 チャック径8mm(ChinaCNCZone)
検査器具:ダイヤルゲージ(シチズン)
80mmほど突き出してチャックし、テーブルにマグネットスタンドで固定したダイヤルゲージの針をバーの側面に当て、指で主軸を回して針の振れの絶対値を読んだ。
コレット面から10mm程度の部分で一目盛、0.01mm程度のブレ、
テストバーの先端付近、コレット面からの距離で言えば70mmくらいの位置では0.025mm程度のブレだった。
実際の使用では工具の突き出しは30mm程度だろうから、どんなに大きくとも0.02mm程度だろう。
チャックしなおして何度も測定したわけではないので偶然芯が出た可能性もあるが、
一発でこの精度が出るなら仮に悪いほうに転がっても芯出しすれば再現できるだろうから精度は十分だと思う。
仕上がりに対する影響は工具の芯ぶれより先に機械の剛性が問題になるだろう。
このモータは1500Wのものだが、商品画像を見る限りこの手のCNCにはだいたいどれも同じものが使われているようなので(モータ出力の差はあるが)どこから買ってもだいたい同じになる気がする。
芯がどうしても出なかったら素性の分からないコレットのせいにしようと思ったがこの精度なら言うことはない。
13個セットで2500円のコレット、他のサイズの精度はまだ見てないが良い買い物だったかもしれない。
と思ったが全く同じパッケージのものが別のセラーからバラ売りされている。
一個130円程度で13個買っても1700円くらいである。こっちで買った方が安い。
テーブルの平面度
調整未実施