KDX200SRのヘッド開けたらKIPSが壊れてた

オーバーホール

KIPSの保守のためシリンダーを外してみることにした。
以前にKIPSの動作確認のため空ぶかしでの動作確認を行ったとき、アームがちゃんと動作していたので「壊れてはいないが、開けてカーボンを落としておくのも悪くないだろう」という程度の軽い気持ちだった。
開ける前にロッドを引っ張ってみたが固着している感じはない。

壊れていないという確信を持ちつつ、
ヘッドを開けたら右側のバルブの軸が折れていた。
これはまずい気がする。とにかくKIPSの部品を外していく。
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ドロドロだ。
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バルブが見えた状態でロッドを押し引きすると、片側のバルブが回らない。
各部品を外していくとギヤが完全にナメていた。
ロッドの押し引きは問題なくできるわけだ。

バイクブロスでKDX200SRのオーバーホール記事を見つけたが全く同じ状態だった。
www.bikebros.co.jp
「今回はここまでにしておこう」という一文とともに次の記事ではKIPSに触れることなくエンジンを始動している。直さないの?
いままで自分も乗れていたから壊れていてもエンジンは回るんだろうけど。
最後までKIPSに触れることなくレースに出場してレストア企画は締めくくられていた。
あまり参考にならなかったので話を戻す。

バルブ側のギヤは完全に死んでいるが、ロッド側はそうでもない。
ダメになってた方のラックが多少角が丸くなっている。
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問題がなかった方のラック
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磁石を近づけると、ロッドには磁石がつく。ロッドは鉄系、バルブはアルミだろうか。ロッド側が生き残るように設計されているのだろうか。

とにかく、KIPSは半分機能していないことがわかった。
入手以来エンジンの調子が変わったのを感じたことはなかったのでもしかしたら自分はKDXの実力を一度も味わったことがなかったのかもしれない。

対策

直さなくてはならないが純正部品は販売中止、ヤフオクなどにも部品は見つからない。
形状自体はものすごく難しいというわけではない。

...バルブはアルミ製(多分)、外径は最大で20mm、直歯の平歯車でモジュール1、

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歯先円直径は12TでM=1なら通常なら14mmのはずが実測で14.5mmと若干不安要素がある。
モジュールが変なサイズなのか?

しばらく日が経ってから、ラック側でもモジュールを推定できることを思いつき測ってみた。
ラック側の歯10枚分のピッチを測ると、31.4mmくらいである。やはりモジュールは1のようだ。
転位歯車というやつではないかという疑問が出てきた。
そういうのがあるというだけで詳しくは知らなかったが、調べてみると歯先円直径も大きくなるらしい。
KHKのページで紹介されていた転位歯車の説明によると歯先円直径はd + 2m(1+x )で求まる。
例には転位係数は0.3とされていたので試しにそれで計算すると12+2(1.3)=14.6となる。
ラックがおおむね実測と計算が合っていて、ピニオンのみ直径が大きいことをみるとそういうことだと思ってよさそうだ。
しかしFusion360の標準で用意されているSpurGearアドインには転位係数のパラメータを入れられそうにない。
転位0でもバックラッシが大きくなるだけで使用は可能なんだろうか・・・


とても作れなさそうな複雑な形状のロッドの方は幸いにも何とか使えそうなので、このバルブ一個手に入ればKIPS機能を復活できそうだ。

我が家にはマイクロ旋盤と四軸CNCがある。これらを使えば外形は旋盤で削れる。外形削り後のバルブ部の切り欠きと歯車の歯切りも工具が侵入できない形状ではない。

早速モデリングした。f:id:drops662:20190824232933p:plain
歯車の対向する歯と歯(0°と180°の歯)を結ぶ線とバルブの切り欠きには少し角度がつけてあったが、測りようがなかったので目分量で作ったがモデルと現物を見比べてほぼ同じにできたはずだ。
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ほんの少しずれていてもバルブの開度がその分ずれるだけで致命的な問題にはならないだろう。

モデルは作った。あとは加工だが、CAMでつまづいている。
思うような工具パスが作れない。
そもそもFusion360のCAMでできるのか?

調べていくと、DeskProtoというソフトを使えば作れそうだ。
無料版がある、なんて素晴らしい!と思ったら四軸加工は有料版のようだ。
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TrialModeと書かれた帯がかかり、そこは工具が逃げてしまい加工されない。効果的。
この部品を作る以外には今後ほとんど使いそうにないし、わりと値段が張るのでできれば買いたくない。
図面を書いて業者を探せば同じくらいのコストでより良いものができるんじゃないだろうか。
ソフトを持っている人がいればパスを生成してもらうこともできるだろうがそんなつてはない。