ホイールスペーサの強度?剛性?を解析してみる

ホームセンターのホイールスペーサ

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あのトムも(どのトム)おすすめのホイールスペーサ。

これしかなかったのでこれを買ってきたのですが、

取り付ける直前になって身の細さが気になってきました。だいぶ肉抜きしてあります。

さらに車の後輪のハブ径が139mmなのに対してスペーサの径が大きくなっています。

 

対応するPCDの範囲が広いのと長穴の幅が15mmと大きいため、遊びが大きくセンターを出す仕組みはないため、取り付けの際にスタッドボルトに引っ掛けておくだけだと、外周部にすきまができるくらいズレてしまいます。(スタッドボルト左下)

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どうにかしてある程度センターが出せれば、この隙間はなくすことができますが、

この接触面積でホイールの荷重を負担したとき、何か問題はないのでしょうか。

全面を使って圧縮荷重を受けるだけなのでめったなことはないと思いますが。

 

ちなみに、これはすでに後輪に取り付けて一週間ほど乗っています。センターが出ないので取り付けの際に難儀することはありましたが、(ホイールを差し込んだ後感覚でおよそ中央になるように指でズラしてから本締めした)特に走行中に問題は感じられませんでした。

 

モデリング

取り付け前に紙に型をとり、各部を測ってFusion360モデリングしました。

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加えて、ボルトを通す部分の五か所をノギスで測り、厚みのばらつきがどの程度なのか計測してみました。

5.00、5.00、5.10、5.10、5.25mmでした。

大して精度が出ているわけではなかったので適当なアルミ板を買ってCNCフライスで切り抜けば十分使い物になりそうです。

おそらく材料費だけで購入価格は上回ると思いますが。

シミュレーション

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ハブ、スペーサ、ホイール+タイヤの3つのモデルを作成し、

ハブ、ホイール+タイヤは鋼の塊に設定し適当にスポークをモデリングしています。

スペーサはA6061に設定しています。

それっぽい力をかけたときにどうなるかFusion360の構造解析の試しがてら解析してみます。

※ド素人なので条件指定や設定が正しいかはわかりません。結果は参考程度以下で受け取ることをおすすめします。

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ハブを空間に固定し、ホイールの中心にボルト五本分の軸力に相当する荷重をかけます。

車輪のエッジには1Gのコーナリング荷重が車輪一個にかかったというシビアコンディションとして1300kgfを加えます。

軸力はミスミのボルトの適正締付トルクの技術資料からM12の12.9の強度区分のトルクが11.6kgmのときの軸力が6600kgfでした。

ホイールナットの締付トルクと近かったのでこれを引っ張ります。

この車のホイールナットはP=1.25なので並目ねじと比較して軸力に差があるかもしれませんがとりあえずそのまま使います。

つまり、ホイールの中心には33000kgfを加えます。想像以上の荷重です。

変位

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変位は当然車輪の外周部に最大値がきており、0.15mm程度です。
タイヤのよれと比べればはるかに小さい変位なのでどうということはないでしょう。

応力

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応力はやはりホイールスペーサが一番応力が働きます。

大部分は軸力によるもののようで、荷重をホイールの中心にまとめてかけたせいか、

スペーサの中央へ行くほど応力が大きくなっています。

スペーサの向きを間違えたため、ボルトとスペーサが干渉していますがあまり結果には関係ないと思いますので無視してください。

このスペーサはアルミ鋳物のようですが、

ダイカストの90%を占めるというADC12という材質の引張強さは310MPa、

0.2%耐力は150MPaとなっていますので、これがその材質だとすれば、安全率は1を割ります。

中心にボルト五本分の荷重をまとめてかけているので、きちんとボルトそれぞれに掛ければ若干応力は分散するかもしれませんが、黄緑色のあたりから150MPaになるため、安全率が1を割るのはいずれにしろ変わらないと思います。

まとめ

車輪の横荷重でスペーサの外周部のかかりの浅い部分に何か問題が出そうかどうか、解析でわかったらいいな

と思ってやってみましたがホイールナットの力が圧倒的過ぎるのか、車重程度の横荷重ではスペーサはびくともしないということなのか、ちょっと予想と違う結果になりました。

ホイールスペーサが受けるのはもっぱら圧縮荷重なので、引張荷重や曲げ荷重が加わる部品と違って折れたりちぎれたりしないため降伏してもすぐにどうこうなるものではなさそうですが、座屈すればホイールナットの緩みや、この商品ではないようですがスペーサが割れたりということもあるようなのでその懸念はあると思います。

また、鉄ホイールを使う場合は接触面積が小さかったり、インパクトレンチで適当に締めている場合はもっと軸力がかかっていたりする可能性があるため、さらに気を使う必要がありそうです。

 

圧縮変形の場合、降伏点を超えて圧縮した場合はショットピーニングをしたときみたいに特性が向上するんでしょうか。

だったら、使い込むにつれて性能が上がるなんてこともあったり?