PC用電源でセルモータ―を回そう

車庫に眠らせてある原付なんかはたいていバッテリーが上がっていたりして始動が大変だ。

こまめにバッテリーを充電するのも面倒だし、自分の場合そもそもバッテリー上がりでダメになって以来バッテリーそのものが入っていない。

そんなときのため、電圧12Vで大電流を得られるような電源装置を調達する。

 

ちなみに、12V10AのACアダプタは持っていたが、原付スクーターのセルモーターは回せなかった。

それ以上の電流を取り出せることが条件となる。

身近で強力な電源装置

PCの電源装置(ATX電源)は3.3V、5V、12Vの三種類の電圧で大電流を流す能力を持ち、PCという精密機械を長時間駆動できる、どこにでもある優秀な電源装置といえる。

家に余っているなら使わない手はないし、中古で買ったとしても安価に手に入るだろう。

 

筐体にそれぞれの電圧で何Aの電流が流せるか書いてある。

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自分が使ったKEIANのATX電源に書かれている供給電流の表。

同じ12Vでも、2系統に分かれているような書き方をしてあるので、二つ分の電流を得るために単純に二つをまとめてもいいのかどうかが唯一の懸念事項だ。

まとめられれば最大38Aを供給できる。

作業

やるべきことはほとんどない。

PCの電源はただコンセントに接続しても出力は出ないため、それをオンにすることと、配線を少しいじるだけである。

電源の出力をONにする

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上の写真のようなものを作る。上のものは1mmのすずメッキ線で作ったがゼムクリップかはんだでもいいと思う。

作った針金でマザーボード用コネクタの14ピンと15ピン目を短絡すると電源の出力がONになる。

ピン番号の数え方はコネクタの爪のある方を上にして右下から数え、左上が20番になる。ピン数を増やすための増設のコネクタが右に出ているが、これは無視して数える。

 

細い緑の線と隣の黒い線を接続するという考え方でもいいが線の色が必ずそうなっているかはわからないので注意。

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針金を刺し、テープか何かで保護しておく。

これでコンセントにつなげば各電圧が出力される。

切りたいときはATX電源本体のスイッチで主電源そのものをオフにすればいい。

二系統なのかどうかのチェック

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12Vのラインが二系統に分かれているかの確認のためと、多少バイクと電源が離れていても使えるよう、長い電線を基板から直接引き出すため、フタを開ける。

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 基板を表側から見ると、「12V1」「12V2」と丁寧に印刷が分かれているが、裏を見るとランドが繋がっていたので懸念事項は解決された。ものによっては系統が分かれているかもしれないので自分のPC電源がどうなっているか確認する場合はテスターで導通をチェックすればいいはず。

配線

配線は、簡単に済ませるのであれば黄色の線が12Vの線なので、(だいたいどのPC電源もそうなっている。)コネクタを切り落として芯線を出し、線を延長したりクリップをつけたりすれば使うことができる。

 

種類の違う線を連結することやコネクタを切るのが気に入らなかったので、

VVFケーブル(コンセントの配線に使う電線)を基板から直接引き出した。

家にある中ではいちばん大電流に適していそうな電線だった。

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上の太い被覆の線がVVFケーブル。

配線の引き出し口に余裕があったのでここから出すことができた。

作業はこれで終わり。

使用感

実際にディオのセルを回してみると、フル充電のバッテリーを使っているときのように安定してクランキングでき、電源容量的には十分のようだ。

問題

セルは快調なのでほどなくエンジンはかかったが、アクセルを吹かすと電源が落ちてしまった。

エンジンのジェネレータの電圧が電源装置を上回り、電流が逆流してしまったのかもしれない。

全く考えていなかったが普通はバッテリーに充電しなくてはならないので大いにあり得る。

原付スクーター程度ならアイドリングでは問題は起こらなかったのでエンジンがかかったら速やかに線を外すようにしてもいいが、四輪車や排気量が多いバイクはアイドリングでも十分な電圧が帰ってきてしまう可能性があるので安心して使うにはダイオードを取り付ける必要がありそうだ。

PCの電源は保護回路が働いただけなようで、線を外してコンセントを抜き、電源を入れ直したら問題なく復帰した。

うっかりショートさせたこともあったが、同じ手順で復帰した。

保護回路が優秀で大変ありがたい。