リヤカーを作ろう

よそに保管していた薪を取りに行ったらシロアリが山ほどついていました。

気持ち悪いので車に載せたくありません。

そもそもセダンで薪なんかを運ぶこと自体が間違っている気がします。

軽トラがすべての面においてベストですが、軽トラが必要な状況というのが他にあまり思いつかないうえ、そこそこの維持費がかかります。

次点でトレーラーが思いつきましたが、少なくとも軽自動車登録が必要で(自動車税がかかる)、購入代金がかかり、場所はそれなりに取り、単体では機能しません。

トレーラーはキャンピングトレーラーだとか船を運ぶとかの特別な目的があるか、特別大きい荷物や人と荷物を同時に運ぶなど、単車ではどうにもならない場合でないとあまり利点を発揮できなそうです。

 

結論、リヤカーを自作して原付で引くことにしました。

運ぶ薪も一回でそれほど多く運ぶわけではないし、

税金がかからずイニシャルコストも(他の選択肢に比べて)かからないのでよさそうです。

それに、ものづくり欲を満たすのにも手頃そうです。

フレームの作成

フレームは家に余っている2×4くらいの木で作ります。

荷台面は1600×750くらいです。幅はバイクのミラーを含めた幅と同じ程度にし、長さは適当です。

日の字に枠を組みます。接合部はコーススレッド+ボンドです。

ボンドで少し強度アップを期待しています。

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バイクと繋ぐための腕の部分はリヤカーのように二本にしました。

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世の中のトレーラを見るとトラクターとの干渉を避けるためか一本出しのものがよく見られます。金属製でボルト留めや溶接ならそれでもいいですが、

このトレーラーはボルト接合+木製なので、なるべく曲げモーメントがかからない方法を取りたいと思ったからです。

ジョイントを頂点に三角形に伸ばしてもいいですが、ナンバーやテールランプが隠れないようにするには四角く取り回した方が良いのではないでしょうか。

車輪

車輪は走行性能とかっこよさからいって、ある程度大径で空気入りのタイヤがいいです。

自転車のタイヤぐらい大きいほうがかっこいいですが、荷台の面より車輪が高いと使い勝手は落ちるし、自転車のタイヤは軸径が細いので、一輪車(ネコ車)のタイヤを使うことにしました。

ホームセンターにあるので入手性もよく、ホームセンターで手に入る車輪の中ではいちばん直径が大きいわりに安いです。一本1000円くらい。

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これは一輪あたり耐荷重が70kgだそうなので2本合わせて140kg、リヤカーの積載制限は120kgなのでちょうどよくなりそうです。

軸径は16mmで、一輪車用の軸は付属しますが片持ちにするには長さが合わないのでM16のZボルト、ナットを買いました。

 

Zボルトは木造建築用のボルト規格で、強度区分4.6相当とボルトの強度としては最低限な感じですが、ホームセンターに置いている中では同じ強度区分のボルト、ナットと比べてもだいぶ安かったです。

なにより付属の軸に代わる長めのスタッドボルトのようなものはこれしか取り扱いがありませんでした。

有色クロメート(金色のような虹色のようなやつ)メッキされており、JISを見ると建築用だけあってか、ある程度耐食性が考慮されているようです。

木に対して使うものなので、厚手の角座金などもラインナップがあり、木製フレームには最適かもしれません。ボルトとしてはそこまでの強度ではないとはいえ、一輪車の車輪や木製のフレームに合わせる分には全然不足はない強度だと思います。ボルトだけ強くしても座面や部材が先に負けるでしょう。

 

一応計算してみると、100mmの片持ち梁に70kgfかけたとして、70N・mのモーメントがボルトにかかったときの応力はだいたい175MPaでした。安全率的には1.3くらいですがまあいいでしょう。

ボルトが曲がって鬼キャンになるようなら構造を見直します。

 

 サスペンション

走行するものを作るなら、サスペンションを備えなければ面白くありません。

ダブルウィッシュボーンなどのアームが進行方向に直交する向きのサスペンションは付け根をテコのようにこじる力のかかり方になるので木製フレームの強度、剛性から言っても都合が悪そうです。

構造が簡単で、フレームにも部材を増やさずなじみそうなのでトレーリングアーム式のサスペンションにしました。

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ピボット部は20mmのアルミパイプを使い、両端Rピンで抜け止めにしています。f:id:drops662:20210907001226j:plain

スプリングはミスミのやつ、ダンパーにはコガネイKSH10X15Cを使用します。

どちらも不用品をもらったものを家に遊ばせていたもので、こういうときに在庫がハケるのも気分がいいです。

スイングアームはストロークの割には長くしています。スプリングを直接配置しているため、アームの上下によるスプリング座面の傾きをなるべく少なくするためです。

 初めは純粋なトレーリングアームでしたが、車輪が片持ちのため荷重がかかったときにアームがねじれてアームの回転軸を支えるところ(クレビスっていうのか?)が広がっていたのでトレーリングアーム間に梁を追加して、いわゆるトーションビーム式にしました。

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トーションビーム追加前 70㎏程度積載時

スプリングは車軸より後ろにしていますがそれでも反発力が足りないので二列で使います。サスストロークは40mm程度です。

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ダンパーは余っていたのを消費するために後から追加しましたが上に乗って車体を揺する程度なら結構効いてる感じです。

しかし、ダンパーの吸収エネルギーはカタログ値10Jなので、あまりピンときませんがモノに対して容量が小さいのは想像できます。そもそも本来の使い方でもありません。

減衰力は無段階調整が効き、MAXにすると10J程度のワークに対して使うにはほぼ剛体に衝突するのと変わらないのでは?というほど硬くなります。

構造上縮み側にしか働きませんが、伸び側減衰は弱いほうが良いとも聞くので(いろいろ条件はあると思いますが)別にいいかなと思っています。

そもそも駆動輪でもなければブレーキもないので、びよびよいつまでも揺れなければオッケーです。

 

余り物を使わずに新品で用意するならバイクのショックのような両端にブラケットがついたユニットを買って付けたほうが楽でいいと思います。

牽引ジョイント

ジョイントはどうすればいいか、結構迷いました。

バイクで牽く場合、バイクのバンク、旋回時の折れ曲がり、坂の頂上や段差などでの縦回転を吸収する必要があります。最初はピロボールを使おうと思っていましたがバンクに対する許容角度がいまいち足りません。

実際リヤカーを牽いている最中は大してバンクしないと思いますが、バイクの場合は転倒することも考慮しておかないと、いざ転んだときにジョイントが壊れたりしたら困ります。

四輪用のトレーラーに使うヒッチボール+カプラーも、ねじり方向の許容量は少ないように見えるためバイクには適していないでしょう。

短めの鎖などで繋げば自由度は高くなりますが、自由度が高すぎると遊びが大きく、絡まったり加減速時の衝撃につながります。

シャックルを買ってみたりチェーンジョイントを買ってみたりしましたが、結果的に

アイナットと自作のブラケットだけしか使いませんでした。

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リヤカー側に貫通穴を開け、ボルトを通してアイナットをダブルナットで固定し、アイナットが自由に回転するようにします。

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スリーブを打ち込み、グリスを塗ったボルトを通す

これでバンク角(ロール)を吸収します。写真ではリヤカー側を回しています。

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ブラケットからピンを出し、アイナットに通して固定すれば、ピンは地面に垂直なため旋回時のバイクとリヤカーの角度(ヨー)を許容します。

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バイクとリヤカーの上下(ピッチ)は、アイナットのアイの径に対してピンが細い分、一定の角度は許容します。

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ピッチ角に関しては比較的振り角がありませんが、リヤカーは一対の車輪しか持たないため、リヤカーそのものが傾くことでも吸収されるし、バイクを倒しても大きく角度が付くこともない部分です。

リヤカーを牽いている最中にウイリーしたりガケを降りる予定がない限り、それほど大きな許容量は必要ありません。

テスト

実際に荷物を運んでみました。

この時点ではダンパーは未装着、ジョイントは車体側、リヤカー側それぞれに固定したアイボルトをチェーンジョイント(リングキャッチ)でつないだ遊び多めのバージョンでした。

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205/60 R16スタッドレス4本を運んだとき

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丸太(80㎏程度?)を運んだとき

タイヤ、木を運んでみましたが特に問題はありません。

一本道は多少のカーブがあっても牽いていることを忘れるくらいにスムーズです。

発進時、蛇行(試しにやってみた)、右左折などは重さを感じたりリヤカーに振られる感覚はありますが、走行の問題になるレベルではありません。

10km程度の道のりを無事に運ぶことができました。

灯火類

リヤカーにはテールランプはいらないはずですが、荷物を載せると車体のテールランプが隠れる場合があるので、取り付けることにしました。

Aliでテールランプを買います。

このランプは幅が50mmで、2×4の短辺にフィットします。

商品説明には執拗に2個セットの写真が載っていますが、実際には一個の注文で一個だけ届くので注意が必要です。

うっかり間違えて一個しか買わなかったので、もう一個はAmazonの中古品(24V用)を買い、ばらしてLED用の抵抗を並列に追加して下がるように改造して使っていますが明るさが左右で違ってしまいました。

ランプの電力は車体のテールランプの配線を分配し、車体外に出してキャリアの上の端子箱に接続しました。

ランプはM5のネジで固定するため、ピッチを測ってM5鬼目ナットをねじ込み、配線の逃がしのためフレームの一部を抉ります。

配線を車体まで取り回してテールランプの点灯を確認しました。

配線は引っかけないようにうまくフレームを這わせておきました。

その他

製作費は、

木材・・・¥0

スプリング(SWY42-100)・・・¥0(一個¥700)×4

ダンパー(コガネイKSH10×15C)・・・¥0(買うと一個¥10000くらい)×2

車輪・・・¥1800×2

車軸用ボルトナット・・・¥1000

Rピン・・・¥100×4

アイナットなどジョイント関係・・・¥1000(使ったのは¥120のアイナットだけ)

テールランプ 2個・・・¥1500

配線類・・・モノによる

 

うろ覚えですがだいたいこのくらいだと思います。

リヤカーとしての基本の構成なら(灯火、ダンパー等を抜くと)10000円くらいで済むんじゃないでしょうか。